【症例】フレンチブルドッグのいびき・えずきは病気?軟口蓋過長症の手術事例
フレンチブルドッグやパグなどの短頭種でお使いの飼い主様から、よくいただくご相談のひとつが「呼吸の音」や「いびき」です。
「短頭種だからいびきをかくのは当たり前」と思われがちですが、実は空気の通り道が狭くなって息苦しさを感じているケースも少なくありません。
今回は、「呼吸するときのいびき音が大きくなった」「痰が絡んだようにオエッとすることがある」という症状で来院し、去勢手術と同時に軟口蓋切除術を行った9か月齢のフレンチブルドッグちゃんの症例をご紹介します。
来院時の症状と検査
| 犬種 | フレンチブルドッグ |
| 年齢・性別 | 9か月齢 / 男の子 |
| 主訴 | 呼吸時のいびき様の発声・増強、えずくような症状(オエッとなる) |
レントゲン検査を実施したところ、喉の奥に位置する「軟口蓋(なんこうがい)」が厚く、後方へ伸びている(過長している)所見が確認されました。
- ガーガー、ブーブーという喉鳴り・呼吸音
- 睡眠時や安静時の大きないびき
- 咳込みやえずくような症状(喉の違和感)
- 運動や興奮時の体温上昇・呼吸困難
今回の症例では、この軟口蓋過長が気道を圧迫し、一連の症状を引き起こしている主な要因と診断しました。
治療の経過:内科治療から手術まで
1まずは内科治療で炎症を抑制
来院時には緊急の呼吸困難状態は見られなかったため、まずは消炎鎮痛剤の投与を行い、喉粘膜の腫れや炎症を抑えるアプローチを行いました。
薬の服用により「オエッ」と痰が絡むような症状は落ち着き、呼吸状態も一時改善しました。しかし、構造的な問題である「いびきのような呼吸音」は依然として残っていました。
2去勢手術と同時に「軟口蓋切除術」を実施
伸びてしまった軟口蓋自体を薬で短くすることはできません。今後も成長に伴って気道への負担が継続するリスクを考慮し、飼い主様とじっくりご相談の上、予定していた去勢手術と同タイミングで「軟口蓋切除術」を実施することとなりました。
手術では、気道を塞いでいる余分な軟口蓋を適切な長さに切除・形成し、空気の通り道をしっかりと確保しました。

伸長した軟口蓋を牽引し、切除

軟口蓋を切除し、吸収性の糸で縫合を終えた

伸長した軟口蓋を切除し、気管チューブが通る気管の入り口がみえるようになった
術後の経過
術後は喉の不快感や一時的な腫れに配慮しながら注意深く経過を観察しました。
数日で喉の腫れも引き、術前に続いていたいびき様の呼吸音は解消。引っかかりのない、スムーズで穏やかな呼吸ができるようになりました。現在も経過は非常に良好です。
知っておきたい「短頭種気道症候群(BOAS)」とは?
フレンチブルドッグ、パグ、ブルドッグ、シー・ズーなどの鼻が短い犬種は、構造上、生まれつき解剖学的に気道が狭くなりやすい傾向があります。これを短頭種気道症候群(BOAS)と呼びます。
- 外鼻孔狭窄: 鼻の穴が狭い
- 軟口蓋過長: 軟口蓋が長く・厚く喉に垂れ下がる
- 喉頭嚢外反: 陰圧負荷などにより喉頭嚢が反転・脱出して気道を狭くする
- 気管形成不全: 気管自体が細い
これらが複合して起きることも多いですが、初期の段階や若齢期に適したアプローチ(今回の症例のように去勢・避妊手術と同時の整復など)を行うことで、将来的な重症化を防ぎ、日常生活の質(QOL)を大きく向上させることができます。
フレンチブルドッグの「いびき・呼吸音」で気になる方へ
「犬種特有のものだから」と見過ごされがちな呼吸音ですが、以下のような変化が見られる場合は、気道に強い負担がかかっているサインかもしれません。
- 以前に比べて呼吸音やいびきが大きくなってきた
- 起きている時や安静時にもガーガー・ブーブー鳴る
- 頻繁にオエッとえずく、吐き出しそうな仕草をする
- 暑い日や少しの運動ですぐにハアハアと苦しそうにする
呼吸のしづらさは、ワンちゃんにとって大きなストレスや熱中症のリスクにつながります。少しでも気になる変化がございましたら、お早めに当院までご相談ください。
