症例
10歳 避妊済みメス ポメラニアン
来院理由
血尿、頻尿、尿漏れの症状が見られたため来院されました。
検査・診断
初診時の尿検査では出血反応と細菌が検出されました。
エコー検査では膀胱自体に明らかな異常は認められませんでした。
抗生剤および止血剤による内服治療を行ったところ、頻尿は改善しましたが、血尿と尿漏れの症状は改善が見られなかったため、全身の精査を行いました。
その結果、膣内に約3cm大のしこりが確認されました。
このしこりにより、
・膣からの出血が尿に混じり血尿として見えていたこと
・膣内が圧迫され、排尿後の残尿により尿漏れが起きていたこと
が原因と考えられました。
治療(外科手術)
レントゲン検査およびエコー検査の結果、膣内のしこりは他臓器からの転移ではなく、明らかな転移病変も認められなかったため、外科手術による切除を行いました。術前にはさらにしこりの拡大が認められ、容易に外陰部の外に露出できる状態になっていました。

手術では、膣の直上の皮膚を切開し、しこりの発生部位と範囲を慎重に確認しました。
しこりは膣の腹側の粘膜から発生しており、尿道出口に近い位置にあったため、尿道にカテーテルを設置し、尿道を損傷しないよう十分注意しながら根元から切除しました。

尿道に損傷がないことを確認後、膣粘膜および皮膚を縫合し、手術を終了しました。


病理検査結果
切除したしこりは、病理検査の結果、「膣腺維腫」という良性の腫瘤と診断されました。
術後経過
術後の経過は良好で、血尿や尿漏れの症状は完全に消失し、現在は元気に過ごしています。
まとめ
血尿や頻尿、尿漏れの症状は、膀胱炎だけでなく、尿路周囲や生殖器の異常が原因となることもあります。
また、今回のようにホルモンとの関連が考えられるしこりでは、今後も新たな病変が出てこないか注意深く経過を見ていくことが大切です。
考察・避妊手術の重要性について
「膣腺維腫」の多くは、性ホルモンの影響で発生します。今回の症例では、4歳齢で避妊手術を受けていましたが、手術を行うまでの期間に分泌されていた性ホルモンの影響により、腫瘍が発生・発育した可能性があると考えました。
犬や猫において、適切な時期に避妊手術を行うことで、
膣の腫瘍をはじめ、子宮の病気や乳腺腫瘍など、将来的に命に関わる病気のリスクを大きく下げることができます。
そのため、現在犬や猫を飼育しており避妊手術を行うか悩まれている方や、今後新たに犬や猫を迎える予定のある方には、予防医療の一環として避妊手術の実施が重要です。
ペットの避妊手術や去勢手術について不安や疑問がある場合は、動物の年齢や体調、生活環境に合わせて最適な時期や方法をご提案いたしますので、どうぞお気軽に当院までご相談ください。