【手術症例CASE9】ハリネズミ(4歳 雌)体表腫瘤切除をおこなった症例

ハリネズミは全身が固い針で覆われているため、皮膚にできた小さなしこりや腫れは、犬や猫と比べて初期段階で見つけるのが非常に難しい動物です。
今回は、「歩き方の違和感」をきっかけにご来院いただき、左前足の付け根近くにできた約3cmの大きなしこりを無事に手術で摘出した症例をご紹介します。

1. 症例概要

対象動物ハリネズミ(4歳・メス)
主訴最近、歩き方がいつもと違う(食欲はあり)
視診・触診左前足の後ろ側に硬く丸い大きなしこり(表面の傷・出血なし)
初期経過消炎鎮痛剤・抗生剤による内服治療を実施するも、数日で縮小せず拡大傾向。元気の低下が認められたため精密検査へ移行。

診察時の症例 左肩周囲が大きく腫れている

2. 麻酔下での詳細検査と適応判断

ハリネズミは警戒すると体を丸めて針を立ててしまうため、起きている状態では「しこりの浸潤範囲」や「周囲の筋肉・骨との位置関係」を正確に評価できません。

そのため、飼い主様とご相談のうえ、全身麻酔下で詳細な検査を行い、安全に切除可能と判断できればそのまま手術へ移行する方針をとりました。

【麻酔下検査(レントゲン・超音波)での確認ポイント】
  • サイズ:約3cm(ハリネズミの体格に対しては大型の腫瘤)
  • 発生部位:左前足の後ろ側、主に皮膚の下(皮下組織)
  • 深部への浸潤:周囲の筋肉との強い癒着なし/肩の骨周囲への深い浸潤なし

検査の結果、周囲の重要組織を大きく損傷することなく安全に剥離・摘出できる見込みが高いと判断し、そのまま摘出手術を実施しました。

レントゲン画像 皮下に球型の腫瘤を認める      エコー画像 約3cm大の皮下腫瘤

3. 手術経過と病理組織検査

手術では出血に細心の注意を払いながら、周囲の組織から慎重にしこりを分け進めました。事前検査の通り深部組織への強い固着はなく、根元を安全に処理して約3cmの腫瘤を綺麗に全摘出することができました。

術中の大量出血やトラブルもなく、麻酔からの覚醒も良好で無事に手術は完了しています。

全身麻酔 腫瘤摘出前

腫瘤摘出後に皮膚縫合 手術終了

摘出した腫瘤

🔬 病理組織検査の結果(診断名:肉腫 NOS)

摘出した腫瘤を専門機関で検査した結果、非皮下性の悪性腫瘍である「肉腫 NOS(特定不能の肉腫)」と判定されました。

  • 完全切除の確認:切除した周囲の縁(マージン)に腫瘍細胞は認められず、今回の手術で腫瘍自体はしっかり取り切れていることが確認されました。
  • 今後の方針:悪性腫瘍という性質上、今後は手術部位の経過観察と再発予防のための定期チェックを継続していきます。

術後は一時的に食欲が落ちる時期もありましたが、手厚い看護とご家族のケアにより、食欲は徐々に元の状態へと回復していきました。

前足の動きを邪魔していた大きなしこりがなくなったことで歩行状態も大幅に改善し、現在は元気に日常を過ごしてくれています。

4. 飼い主様へ|ハリネズミの「しこり」で注意すべきポイント

「ここまで大きくなったら手術は無理では…」と心配される飼い主様もいらっしゃいますが、手術の可否はサイズだけで決まるわけではありません。今回のように大きくても周囲と分離しやすければ安全に取れる場合もありますし、小さくても深い筋肉や骨に浸潤していれば大掛かりな処置が必要になるケースもあります。

日常の観察で以下のようなサインに気づいたら、なるべく早い段階でのご受診をおすすめします。

※本記事でご紹介した内容はあくまで一症例です。年齢、全身状態、発生部位や腫瘍の性質によって最適な治療プランは異なります。愛犬・愛猫ならびにエキゾチックアニマルの体調や皮膚の異変について気になる点がございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
監修した獣医師
Veterinarian / ブリス橋本動物病院
獣医師 濱根 雅人

地域のホームドクターとして犬・猫の予防医療から内科・外科まで幅広く診療。飼い主様にわかりやすい説明と、一頭一頭に合わせた診療を心がけています。

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